母さんの戸棚に手を掛ける
指を掛ける
その引き戸に
震える指を掛ける
そろそろと空けた隙間から
干からびた記憶の砂塵が
さらさらと流れ落ちる
見たくも感じたくもないのに
期待の片鱗が思わせぶりに目を伏せるから
怒りを握り潰しながら
私はまた引き戸に指を掛けてしまうのだ
もうまっぴらだ!
母さんの幻覚なんて
母さんの幻聴なんて
でもそれはすべて私の身勝手な幻想だと
母さんはきっと思うだろう
「私ね、これからお友達と映画に行くの」
「お友達って誰?」
「あら、女学校じゃない!」
それは嬉々として子供のように
凛として自慢げに
「ねえ、母さんさぁ いつ卒業したの?」
「去年!」
貴女はあなたの現実の中を自信を持って歩いている少女
私の現実は虚構だと断定できるほどに
私の悲しみなんて貴女の冷笑の先に潰される
夏の終わりの蚊のようにあっけないもんさ
血を吸う前に潰される
毎日違う名前の友人達が母さんの前に立ち現れる
毎日どこかへ出かける
日々懐かしい知人達に囲まれて過ごしている
嬉しそうな貴女が憎らしくなる
もしも私の背中に白い翼があったら
輝く微笑みを貴女にあげる
けど・・・・・
あいにく見えるのは
古びた仏壇と
ポータブルトイレと
しみだらけの畳と
介護ベッドの上の
呆けた目の母さんだけだ
それでも母さん
貴女の戸棚に触れたい
あきらめの悪い私の期待が
貴女の唇を見つめているから
すべてジョークだとわからせてくれるまで
愚かでもいい
干からびた胎盤に出逢えるなら
愛情なんてなくてもいい
もう一度だけ私を見て!
もう一度だけ私の名前を呼んでください
指を掛ける
その引き戸に
震える指を掛ける
そろそろと空けた隙間から
干からびた記憶の砂塵が
さらさらと流れ落ちる
見たくも感じたくもないのに
期待の片鱗が思わせぶりに目を伏せるから
怒りを握り潰しながら
私はまた引き戸に指を掛けてしまうのだ
もうまっぴらだ!
母さんの幻覚なんて
母さんの幻聴なんて
でもそれはすべて私の身勝手な幻想だと
母さんはきっと思うだろう
「私ね、これからお友達と映画に行くの」
「お友達って誰?」
「あら、女学校じゃない!」
それは嬉々として子供のように
凛として自慢げに
「ねえ、母さんさぁ いつ卒業したの?」
「去年!」
貴女はあなたの現実の中を自信を持って歩いている少女
私の現実は虚構だと断定できるほどに
私の悲しみなんて貴女の冷笑の先に潰される
夏の終わりの蚊のようにあっけないもんさ
血を吸う前に潰される
毎日違う名前の友人達が母さんの前に立ち現れる
毎日どこかへ出かける
日々懐かしい知人達に囲まれて過ごしている
嬉しそうな貴女が憎らしくなる
もしも私の背中に白い翼があったら
輝く微笑みを貴女にあげる
けど・・・・・
あいにく見えるのは
古びた仏壇と
ポータブルトイレと
しみだらけの畳と
介護ベッドの上の
呆けた目の母さんだけだ
それでも母さん
貴女の戸棚に触れたい
あきらめの悪い私の期待が
貴女の唇を見つめているから
すべてジョークだとわからせてくれるまで
愚かでもいい
干からびた胎盤に出逢えるなら
愛情なんてなくてもいい
もう一度だけ私を見て!
もう一度だけ私の名前を呼んでください
#
by kayo817
| 2013-08-04 10:54
| mother

